困っている人のために価格を下げる。買いやすいように分割払いを用意する。どちらも善意から出た工夫ですが、数字の裏付けがないまま進めると、自社も相手も苦しくなることがあります。YouTube「にきたま」第11回の内容から、値決めの考え方を整理します。
この記事のポイント
- 値下げは、損益分岐点を大きく押し上げる固定費が重い事業ほど、少しの値下げで「売らなければならない数」が大きく増えます。
- 相手が「払い続けられるか」まで考える分割払いで買いやすくしても、相手の収入が増えなければ、代金は回収できません。
- 外してはいけないのは、自社と相手の「粗利と固定費」双方が粗利で固定費をまかなえて、はじめてお金が回ります。
値下げで、損益分岐点はどれだけ上がるのか
損益分岐点とは、売上で費用をちょうどまかなえる、赤字と黒字の分かれ目のことです。固定費(家賃や人件費など、売上に関係なくかかる費用)を、1つ売るごとに残る粗利で割ると、何個売れば黒字になるかが分かります。
| 例:固定費 2,000万円の事業 | 値下げ前 | 2割値下げ後 |
|---|---|---|
| 販売価格 | 120万円 | 96万円 |
| 変動費(1台あたりの仕入など) | 80万円 | 80万円 |
| 1台あたりの粗利 | 40万円 | 16万円 |
| 損益分岐点の販売台数 | 50台 | 125台 |
数字は説明のための例です。
価格を2割下げただけで、黒字になるために必要な販売台数は2.5倍になります。固定費をかけて事業を立ち上げたのに単価を下げると、固定費を回収できないまま資金が尽きてしまうおそれがあります。自社が続かなければ、支えたかった相手を支え続けることもできません。
相手が「払い続けられるか」まで設計する
一括で払えない相手のために分割払いやローンを用意するのは、一見やさしい方法です。しかし、それで買った商品を使っても相手の収入が増えなければ、借金だけが残り、代金も回収できません。売上が立っても入金されなければ、自社も資金が回らなくなります。
誰が、どうやってお金を稼ぎ、どうやって支払うのか。相手の収益の仕組みまで考えて提案することが、長く続く取引の土台になります。
価格とサービスの範囲は、セットで決める
価格を下げながら、手厚いサービスも続ける。善意からの判断でも、これでは売れば売るほど赤字が膨らみます。基本は次のとおりです。
- 価格を下げるなら、サービスの範囲も絞る
- 手厚いサービスをするなら、それに見合った適正な価格をいただく
- 人手をかける代わりに、リモート対応やデジタルの仕組みでコストを抑えられないか考える
外してはいけない2つの数字:自社と相手の「粗利と固定費」
値決めのシミュレーションで見るべきなのは、次の2つがそれぞれ成り立つかどうかです。
- 自社:販売した粗利で、自社の固定費を回収できるか価格・変動費・固定費から、損益分岐点と必要な販売数を確認します。
- 相手:買った商品やサービスで粗利を生み、その支払いを固定費としてまかなえるか相手にとっても無理のない負担かどうかを確認します。
このバランスが取れて、はじめてお金が回る構造になります。動画は、書籍『社会をよくしてお金も稼げるしくみのつくりかた』(小暮真久 著、ダイヤモンド社)の第2章に登場する架空の事例をもとに、会計の視点から解説したものです。
動画で詳しく(約10分)
値決め・利益計画のご相談は、初回無料です。
まず、話を聞いてみるよくあるご質問
損益分岐点とは何ですか?
売上で費用をちょうどまかなえる、赤字と黒字の分かれ目のことです。固定費を1つあたりの粗利で割ると、黒字になるために必要な販売数が分かります。
値下げをするときに確認することは?
値下げ後の粗利で固定費を回収できるか、損益分岐点がどれだけ上がるかを先に計算しましょう。あわせて、サービスの範囲を価格に見合ったものに見直すことも大切です。
相談は無料ですか?
はい、初回のご相談は無料です。福岡市博多区の当事務所で、値決めや利益計画のご相談をお受けしています。お電話(092-263-8060)またはフォームからどうぞ。
関連サービス
大串公認会計士・税理士事務所では、経営計画・資金繰り計画や自社の数字を把握する仕組みづくりを通じて、続けられる価格と利益の設計をお手伝いしています。
