困っている人の役に立ちたい。その思いから始まった事業ほど、「どこからお金をいただくか」が後回しになりがちです。YouTube「にきたま」第3回の内容から、寄付・利用料・行政の委託という3つの収益モデルの注意点と、単価の見直しが粗利に与える影響を整理します。

この記事のポイント

  1. 収益モデルには、それぞれ注意点がある寄付は関係づくり、利用料は支払い能力、行政の委託は条件と人件費がポイントです。
  2. 支援を受ける人から直接いただけなくても、お金は回せるその場から価値を受け取る別の人が費用を負担する形もあります。
  3. 数量を増やすより、単価の見直しの方が粗利に効く同じ売上でも、残る粗利は大きく変わります。

「お金のことは代表の役目」にしない

現場のスタッフが支援に集中したいと考えるのは自然なことです。ただ、利益を生む仕組みを考える役割を代表1人に任せきりにすると、代表がいないと回らない組織になり、事業を広げることが難しくなります。

非営利とは「利益を出してはいけない」という意味ではなく、出た利益を分配せず、次の活動に使うということです。どうすれば活動を続けられるのかを、現場も含めて考えることが大切です。

3つの収益モデルと、それぞれの注意点

動画で取り上げている書籍では、主な収益モデルとして次の3つが紹介されています。

収益モデルお金を払う人注意したい点
寄付寄付者・会員寄付者は「活動を応援してくれるお客様」。課題と成果を伝え続ける関係づくりがないと、1回で終わりやすい
利用者の負担(利用料)支援を受ける人支援が必要な人ほど、支払いが難しい場合が多い
行政からの委託国・自治体仕様書で内容が細かく決まり、自由度が低い。単価の見直しや、有資格者の配置など条件への対応が必要

行政からの委託は、始めやすく安定しているように見えます。一方で、資格を持つ人を何人配置するといった条件がつくことが多く、人件費という固定費が大きくなりやすい点に注意が必要です。資格を持つ人材は採用の競争も激しいため、条件を満たし続けられるかどうかも含めて、受ける前に収支を見積もっておきたいところです。

支援を受ける人から直接いただけない場合は

動画では、地域で開かれる認知症カフェの例が紹介されています。参加する高齢の方はお茶代程度の負担ですが、会場の運営には、地域の介護施設や医療機関などの事業者が協力していることがあります。事業者にとっては、ふだん接点を持ちにくい地域の高齢の方やご家族と話し、相談にのる機会になり、地域にとっては見守りの場にもなります。

このように、その場から価値を受け取る別の人や事業者が費用を負担する形にすると、支援を受ける人から大きなお金をいただかなくても、活動を続けられることがあります。「誰が、どんな価値に対してお金を払うのか」という全体の流れを描いてみることが出発点です。

数量を増やすか、単価を見直すか

売上を増やす方法には、たくさん売る(数量を増やす)方法と、1つあたりの価格(単価)を見直す方法があります。書籍でも紹介されている考え方を、数字で確かめてみます。

例:原価80円の商品今のまま数量を10%増やす単価を10%上げる
単価 × 数量100円×100個100円×110個110円×100個
売上10,000円11,000円11,000円
原価8,000円8,800円8,000円
粗利(売上−原価)2,000円2,200円3,000円

数字は説明のための例です。

同じ売上11,000円でも、数量を増やした場合の粗利は2,200円、単価を上げた場合は3,000円です。数量を増やすと、そのぶん原価や手間(人件費)も増えます。喜んでもらいたいからと単価を下げ、数量で補おうとすると、忙しくなるばかりで粗利が残らないことがあります。提供している価値に見合った単価になっているかを、定期的に見直すことが大切です。

なお、書籍では営業利益率10%が一つの目安として紹介されていますが、動画では、その前提として一つひとつのサービスから粗利が残っているかどうかを確かめることの大切さを解説しています。

黒字でも、お金が足りなくなることがある

利益が出ていても、借入金の返済などで手元のお金が足りなくなることがあります。例えば、ある月の利益が100万円でも、同じ月に110万円の借入金の返済があれば、手元のお金は10万円減ります。帳簿上の利益と、手元に残るお金は別のものです。

毎月いくら入り、いくら出ていくのかという資金繰りの見通しをあわせて持っておきましょう。くわしくは、関連コラム「なぜ黒字なのに倒産するのか」でも解説しています。

動画は、書籍『社会を変えたい人のためのソーシャルビジネス入門』(駒崎弘樹 著、PHP新書)の第2章をテーマに、会計の実務の視点から解説したものです。

動画で詳しく(約9分)

YouTube「にきたま@現役会計士が読むソーシャルビジネス」より

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よくあるご質問

NPOや一般社団法人は利益を出してもよいのですか?

はい。非営利とは、利益を出してはいけないという意味ではなく、出た利益を構成員に分配せず、次の活動に使うという意味です。活動を続けるためには、一定の利益を確保することが大切です。

行政からの委託事業を受けるときは、何を確認すればよいですか?

仕様書で求められる内容や人員配置の条件、委託料の見直しの可能性などを確認し、人件費などの固定費を含めて収支を見積もっておくことが大切です。

相談は無料ですか?

はい、初回のご相談は無料です。福岡市博多区の当事務所で、収益の仕組みづくりや資金繰りのご相談をお受けしています。お電話(092-263-8060)またはフォームからどうぞ。

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大串 和義

監修 大串 和義(公認会計士・税理士)

大串公認会計士・税理士事務所 代表。福岡市博多区。公認会計士と税理士のダブルライセンスで、税務申告から経営分析まで一貫して対応します。一般社団法人まぜこぜむら 村長。