寄付は、1円残らず現場に届けるべきではないか——。社会貢献に関わる方ほど、そう考えるかもしれません。しかし、仕組みを動かし続けるための運営費がなければ、支援そのものが続かなくなります。YouTube「にきたま」第9回の内容から、NPO法人や一般社団法人の資金の考え方を整理します。

この記事のポイント

  1. 最初に決めたいのは「誰がお金を払うのか」支援を受ける人と、お金を払う人が同じとは限りません。払う人にとっての価値まで設計します。
  2. 運営費は「仕組みを保つための費用」事務・広報・システムなどの費用がまかなえないと、支援の入り口そのものが続きません。
  3. お金の流れをスタッフと共有する利用者の満足が次の利用につながり、それが給料の原資になる。この循環を全員で理解することが大切です。

「誰がお金を払うのか」を最初に決める

社会的な事業では、支援を受ける人(受益者)に支払う力がないことも多く、お金を払う人は別にいることが少なくありません。寄付者、会員、企業、行政などです。ここがあいまいなまま無料や低い価格でサービスを始めると、家賃や人件費などの固定費をまかなえなくなってしまいます。

動画では、書籍で紹介されている「社員食堂でヘルシーなメニューを選ぶと、1食につき20円が開発途上国の学校給食に寄付される」取り組みを取り上げています。ここで大切なのは、お金を払う側(日本の参加者)にも「健康になれる」という自分ごとのメリットがある点です。遠くの課題を、払う人の身近な課題と結びつけたことで、お金の流れが続く形になっています。

「かわいそうだから助けてほしい」だけでは、払う人にとっての理由が弱くなります。払う人が何に価値を感じるのかを、事業の設計の段階で考えておくことが大切です。

運営費(管理費)は、仕組みを保つための費用

動画で紹介されている取り組みでは、20円の寄付のうち一部を事業の運営経費に充てていることに対して、「寄付は全額届けるべきだ」という批判もあったそうです。

しかし、事務局の人件費、広報、会計、システムの維持といった運営費がまかなえなければ、寄付を集める仕組みそのものが止まってしまいます。クラウドファンディングのサービスが手数料を受け取っているのも、同じ理由です。運営費があるからこそ仕組みが続き、結果としてより多くの支援を届けられるという考え方です。

会計の面から、次の2つを分けて見積もっておくと、寄付者や会員への説明がしやすくなります。

  • 支援に直接かかる費用(事業費):支援する人の人件費、材料費、会場費など
  • 運営を支える費用(管理費):事務局の人件費、会計・監査、広報、システム、事務所の家賃など

NPO法人の会計基準でも、活動計算書の費用は「事業費」と「管理費」に分けて示すことになっています。何にどれだけ使っているのかを数字で示せることは、寄付や会費を続けてもらうための信頼にもつながります。

お金の流れを、スタッフと共有する

動画では、放課後等デイサービスのような福祉の事業を例に、経営者とスタッフの間で事業の目的がずれてしまう場面が紹介されています。

利用者が満足し、また利用してくれることで収益が上がり、その収益からスタッフの給料が支払われる——この循環は、福祉の事業でも一般の商売でも同じです。経営者が目の前の支援で手いっぱいになると、新しい利用者にどう知ってもらい、どう続けて利用してもらうかという部分が後回しになりがちです。

  • 毎月の収入と、固定費(人件費・家賃など)の大きさを、スタッフにも分かる形で共有する
  • 「利用者の満足 → 次の利用 → 給料の原資」という流れを、会議や研修で言葉にする
  • 経営者が現場の仕事を抱え込みすぎず、利用者を増やす・続けてもらう仕組みを考える時間をつくる

まとめ:運営費を受け取ることは、支援を続けるための責任

社会的な事業でも、誰が払い、誰が働き、運営費をどうまかなうのかという設計があって、はじめて活動を続けられます。運営費を受け取ることを後ろめたく感じる必要はありません。何にいくら使うのかを数字で示し、関わる人に説明できる形にしておくことが大切です。

動画は、書籍『社会をよくしてお金も稼げるしくみのつくりかた』(小暮真久 著、ダイヤモンド社)の第1章をテーマに、会計の実務の視点から解説したものです。

動画で詳しく(約10分)

YouTube「にきたま@現役会計士が読むソーシャルビジネス」より

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よくあるご質問

寄付金から運営費(管理費)を差し引くのは問題ありませんか?

寄付の募集時に使い道をどう説明しているかによります。運営費に充てる割合や考え方をあらかじめ示し、実際の使い道を報告できるようにしておくことが大切です。個別の事情は、定款や募集の条件もあわせて確認します。

NPO法人の会計で、事業費と管理費はどう分けますか?

NPO法人の会計基準では、活動計算書の費用を「事業費」と「管理費」に分けて表示します。支援に直接かかる費用は事業費、法人の運営を支える事務局などの費用は管理費に区分するのが基本です。

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大串 和義

監修 大串 和義(公認会計士・税理士)

大串公認会計士・税理士事務所 代表。福岡市博多区。公認会計士と税理士のダブルライセンスで、税務申告から経営分析まで一貫して対応します。一般社団法人まぜこぜむら 村長。